「あー、寒かぁ。
風が、つーめたかった。」
冬場は朝、祖父がいつもそう言いながら食卓についていました。
祖父は元々僧侶でしたので
朝からお掃除するのが何十年と日課です。
そして、母は子育て・朝食&お弁当作りがありましたので、朝からお掃除をするヒマはなかったわけですが
多分、祖父の「朝からお掃除頑張ってきたアピール」に少なからず心の中で反発もあったのではと推察しています。
「本当は嫁の仕事なのに儂が頑張ってやっている」とでも言いたげな口調でしたから。
ちなみに祖父は掃除の後の朝食の味噌汁が熱々なのが好きでした。
熱々でないと
「身体があったまらんねぇ。味噌つゆが、ぬるか〜」と、恨めしそうな目で訴えていましたので、それもちょっと母をイラつかせていた様に思います。
そうは言っても母は大人しくて口ごたえなどしない人ですから、ケンカになる事はなかったのですが。
しかし言わずとも、お互いに、常に不満を抱えている様な雰囲気。
それは、家族全員が、お互いがお互いに、でしたけれど。
常に家の空気が重かったです。
長い年月積もり積もって。
掃除をしないと部屋の埃が重く固まっていく様に。どんどんどんどん、重く。
家族間不和はみんなの心と身体をゆっくりゆっくり蝕んで行きました。