「みんな死んでいったよね」
あぁ、あのパン屋さん、今日お休みだね…
くらいの軽さで、友人がさらりと言った。
摂食障害で入院していた、他の患者さん達のこと。
わたしも摂食障害だったけど、彼女と違ってわたしは親にも他の家族にも病院にも相談しなかった。病院に喋ったらその内容が親の耳に入り、「食べ物を粗末にするな!」って殴られたり「食え!」って恫喝されたり「食うな!」って殴られたり、ちょっとよくわからない、よりカオス具合が増しそうな危機感を感じたから。
早く摂食障害で死んでしまいたかった。
死ななかったし、死ねなかったけど。
入院なんてしたくなかったのは
摂食障害の原因とか、病院の先生と面談して、喋らないといけないんだろうなって思って。
親がどんな毒親か訴えても
病院が「お嬢さんの言っていることは本当ですか?それは虐待なのでは?」なんて話を父にしたら
「娘は大げさに言っている。被害妄想だ。虚言癖だ。わたしは大学教授で社会学者だからそんな事を言うわけがない、するわけがない」って、「自分が正しい」という立場でわたしを断罪して、わたしが悪者になって、わたしだけ病院から出られなくなって、異常者扱いされて、社会に殺されるんだと思った。
死にたかったけど、死ぬなら自分で死にたかった。親にも社会にも、殺されたくなかった。殺して欲しかったけど「病院に長期入院したが最後、結局帰って来られなかったね」みたいな、そんな殺され方は嫌だった。
「みんな死んでいったよね」
摂食障害仲間同士だった、彼女の言葉を時折思い出す。
彼女が入院先で一緒だった人たち。
死んだのは、自らが望んだ事?
それとも誰かに殺されたの?
それは
心身ともに、ジワジワと命を奪っていく病。